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「GHS:化学品の分類および表示に関する世界調和システム」の誕生
化学物質は、私たちの生活の色々な場面で活用されており、今や社会に欠かせないものとなっています。 しかし、化学物質は私たちの生活の利便性を高めてくれる一方、危険性や有害性があるものもあります。それぞれの性質に応じて、適切な取り扱いをしなければなりません。
以前から海外では、化学物質を取り扱う人たちに向けて、製品に貼り付けられたラベルでの表示や安全データシート(SDS)という書類を活用して、化学物質の危険性・有害性や取り扱いに際しての注意事項等の情報を伝える手続きやルールが定められている国がありました。しかし、その内容は国ごとに違いがあり、同じ化学物質でも国によって表示されている情報が異なることも少なくありませんでした。そして、そもそもそのような手続きやルールが整備されていない国もありました。
化学物質が世界的に流通している現在、化学物質の製造、使用、輸送、処理、廃棄に関する安全を担保するためには、手続きやルールの世界基準が必要となります。 このような経緯で、国際的に調和された化学物質の分類及び表示方法の必要性が叫ばれるようになりました。そして、「GHS:化学品の分類および表示に関する世界調和システム(The Globally Harmonized System of Classification and Labelling of Chemicals)」という形でまとめられることになりました。
隔年で更新されるGHS
国連GHS文書(パープルブック)は2003年に初版が公開されて以降、国連GHS専門家小委員会で議論された内容がとりまとめられたうえで、 2年に一度改訂されています。2024年4月時点の最新版は、2023年に発行された改訂10版です。
国際連合欧州経済委員会(UNECE)のサイトでは、国連GHS文書が6種類の言語(英語、フランス語、中国語、スペイン語、アラビア語、ロシア語)で公開されています。
日本語版(仮訳)の最新は改訂9版で本ページに掲載していますのでご活用ください。
なおGHS原文に関する著作権は、すべて国連に帰属するものであり、この仮訳は、国連及び仮訳を出版する出版社の許諾を得て掲載するものです。著作権に触れるような複製又は利用は固く禁止されています。
国連GHS文書 改訂9版の和訳(仮訳)のダウンロード
下記からダウンロードできます。
GHSの絵表示
化学製品のラベルを見よう(動画&スライド)
GHSラベルの絵表示(Pictgram)の解説動画です。
(危険性・有害性を知らせる絵表示(GHSラベル))
GHSに沿って作られた、化学製品のラベルの読み方についての解説動画です。
絵表示についての解説も含みます。
(化学製品のラベルを見よう!)
動画の各シーンをスライドにしたPDFです。
社内教育などの際に印刷・配布する場合にお使いください。
関連リンク
- GHS目次
- TDG目次
- TDGとは(危険物輸送に関する勧告 モデル規則、試験方法及び判定基準のマニュアルの和訳)
- GHSとTDGの対比
- 危険物リストの項目、読み方
- TDGと労働災害防止
- 関連リンク
TDGとは
海路や陸路で日々大量に運ばれて私たちの生活を支える化学物質ですが、その中には、危険性や有害性をもつもの(危険物)が非常に多くあります。国境を超えて世界中を安全に行き来させるには、輸送方法や容器、危険有害性の情報伝達など、国際的なルールが不可欠です。
そこで、国際連合欧州経済委員会(ECOSOC)の中に危険物輸送専門家委員会が置かれ、国際ルールを定めることとなりました。1956年、そこで作成されたTDG文書の初版が出版され、その後も、技術の進歩と利用者のニーズの変化に対応するため、同委員会で改訂と更新が行われています。
"TDG"は、United Nations Recommendations on the Transport of Dangerous Goods (国連危険物輸送に関する勧告)の省略名です。資料によっては"UNRTDG"と表記するものもあります。
TDGに関しては2種類の文書が発行されています。
なお、「モデル規則」及び「試験方法及び判定基準のマニュアル」の原文に関する著作権は、すべて国連に帰属するものであり、当サイトの翻訳は、国連及び翻訳物を出版する出版社の許諾を得て掲載するものです。
- 危険物の定義や危険物リスト、容器等についての文書
- 表紙がオレンジ色のため、「オレンジブック」とも呼ばれる
- 第Ⅰ巻と第Ⅱ巻の2分冊からなる
- 2年に1回更新
- 2024年4月時点の最新版は2023年に公表された第23版
UN Model Regulations Rev. 23 (2023) | UNECE
UN Model Regulations Rev. 22 (2021) | UNECE
国連 危険物輸送に関する勧告 モデル規則改訂22版
(令和6年3月21日に和訳版第Ⅰ巻を一部更新)
- 危険物を判断するための試験方法や判定基準についての文書
- 更新は不定期
- 最新版は2023年に公表された第8版
- 7版からTDG及びGHSの合同文書となった
UN Manual of Tests and Criteria Rev.8 (2023) | UNECE
UN Manual of Tests and Criteria Rev.7 (2019) | UNECE
- 国連 試験方法及び判定基準のマニュアル 改訂7版(2019) (PDF: 14.6MB)
- 同 改訂8版(2023)の7版からの改訂箇所 (PDF: 0.2MB)
GHSとTDGの対比
GHS分類の物理化学的危険性は、TDGと深い関係があります。
GHS分類者はTDGの原則も理解しておく必要があります。
GHS 分類 | GHS区分 | TDG(注:( )内の数字は副次危険) |
---|---|---|
爆発物 | 不安定爆発物 | 輸送禁止(国連番号なし) |
区分1.1 | 区分1.1 | |
区分1.2 | 区分1.2 | |
区分1.3 | 区分1.3 | |
区分1.4 | 区分1.4 | |
区分1.5 | 区分1.5 | |
区分1.6 | 区分1.6 | |
可燃性ガス | 可燃性ガス区分1 | 区分2.1又は2.3(2.1) |
可燃性ガス区分2 | 非危険物(国連番号なし) | |
自然発火性ガス | 輸送禁止。安定化して輸送可能にすれば区分2.1。 | |
化学的に不安定なガスA | ||
化学的に不安定なガスB | ||
エアゾール | 区分1 | UN1950 TDG危険物リストで区分1~3の区別はできない。 |
区分2 | ||
区分3 | ||
酸化性ガス | 区分1 | 区分2.2(5.1)又は2.3(5.1) |
高圧ガス | 圧縮ガス | クラス2 圧縮ガス |
液化ガス | クラス2 液化ガス | |
深冷液化ガス | クラス2 深冷液化ガス | |
溶解ガス | クラス2 溶解ガス | |
引火性液体 | 区分1 | クラス3 容器等級Ⅰ |
区分2 | クラス3 容器等級Ⅱ | |
区分3 | クラス3 容器等級Ⅲ | |
区分4 | 非危険物(国連番号なし) | |
可燃性固体 | 区分1 | 区分4.1 容器等級Ⅱ |
区分2 | 区分4.1 容器等級Ⅲ | |
自己反応性化学品 | タイプA | 輸送禁止(国連番号なし) |
タイプB | 区分4.1、UN3221, 3222, 3231, 3232 | |
タイプC | 区分4.1、UN3223, 3224, 3233, 3234 | |
タイプD | 区分4.1、UN3225, 3226, 3235, 3236 | |
タイプE | 区分4.1、UN3227, 3228, 3237, 3238 | |
タイプF | 区分4.1、UN3229, 3230, 3239, 3240 | |
タイプG | 非危険物(国連番号なし) | |
自然発火性液体 | 区分1 | 区分4.2 容器等級Ⅰ(液体) |
自然発火性固体 | 区分1 | 区分4.2 容器等級Ⅰ(固体) |
自己発熱性化学品 | 区分1 | 区分4.2 容器等級Ⅱ |
区分2 | 区分4.2 容器等級Ⅲ | |
水反応可燃性化学品 | 区分1 | 区分4.3 容器等級Ⅰ又は4.2(4.3) |
区分2 | 区分4.3 容器等級Ⅱ | |
区分3 | 区分4.3 容器等級Ⅲ | |
酸化性液体 | 区分1 | 区分5.1 容器等級Ⅰ(液体) |
区分2 | 区分5.1 容器等級Ⅱ(液体) | |
区分3 | 区分5.1 容器等級Ⅲ(液体) | |
酸化性固体 | 区分1 | 区分5.1 容器等級Ⅰ(固体) |
区分2 | 区分5.1 容器等級Ⅱ(固体) | |
区分3 | 区分5.1 容器等級Ⅲ(固体) | |
有機過酸化物 | タイプA | 輸送禁止(国連番号なし) |
タイプB | 区分5.2、UN3101, 3102, 3111, 3112 | |
タイプC | 区分5.2、UN3103, 3104, 3113, 3114 | |
タイプD | 区分5.2、UN3105, 3106, 3115, 3116 | |
タイプE | 区分5.2、UN3107, 3108, 3117, 3118 | |
タイプF | 区分5.2、UN3109, 3110, 3119, 3120 | |
タイプG | 非危険物(国連番号なし) | |
金属腐食性 | 区分1 | クラス8 (TDG危険物リストでは皮膚腐食性との区別はできない) |
鈍性化爆発物 | 区分1 | 液体鈍性化爆発物はクラス3 固体鈍性化爆発物は区分4.1 容器等級Ⅰ 輸送における鈍性化爆発物として国連番号の指定はあるが、危険物リストで区分1~4の区別はできない。 |
区分2 | ||
区分3 | ||
区分4 |
GHS物理化学的危険性の試験方法や判定基準は、その多くがTDGと同じです。
GHS文書の各章に、試験方法及び判定基準のマニュアル のどこを参照すべきか記載されています。
危険物リストの項目、読み方
また、SDSでは、第14項で輸送上の注意点を記載することになっています。
国連で定められた危険物に該当すれば「国連番号」「品名」「国連分類」「容器等級」等を記載しますが、それらを定義しているのがTDGモデル規則です。
SDS作成者がTDGの原則を理解することは、間違いのないSDSを作成することにつながります。
TDGと労働災害防止
このTDG文書は、陸上輸送、海上輸送、航空輸送の土台になっています。日本の船舶安全法及び航空法は、TDGの流れを汲む規定です。
しかし、日本の陸上輸送についてはTDGと関連性がなく、個別の国内法規(道路法、消防法など)で対応することになっています。そのため、国際規制に則って船や飛行機で輸送されてきた化学品が、陸上輸送において危険有害性が適切に伝達されなかったり認識されなかったりして、薬傷などの人的被害につながった事例が複数報告されています。
このような化学品による労働災害を防ぐには、陸上輸送の関係者もTDGを通して化学品の危険有害性を理解することが有効です。
まずは、TDGの標札又はGHSの絵表示の意味を知りましょう。
そして、容器や箱に標札や絵表示があれば、ラベルの詳細内容をきちんと読み取ることを習慣づけましょう。
European Agreement concerning the International Carriage of Dangerous Goods by Road
(欧州危険物国際道路輸送協定)
International Maritime Dangerous Goods code
(国際海上危険物規程)
International Civil Aviation Organization-Technical Instructions for the Safe Transport of Dangerous Goods by Air
(国際民間航空機関-危険物の航空安全輸送に係る技術指針)
International Air Transport Association-Dangerous Goods Regulations
(国際航空運送協会-危険物規則)
GHS文書 (改訂9版) (和訳)(付属書1)をご参照ください。