STEP 3
リスクアセスメントの実施

3-2.いつ、どの物質について何を行う?

どの物質について行う?

義務
  1. 特別規則対象物質(123物質)
  2. リスクアセスメント対象物
    (令和5年(2023年)9月現在 667物質、
    令和6年(2024年)4月1日234物質追加、
    令和7年(2025年)以降も追加予定)
努力義務
  1. リスクアセスメント対象物以外に、GHS分類の結果、物理化学的危険性または健康有害性の危険有害性区分が付与される物質

表示対象物質を裾切値以上含む混合物、又は通知対象物質を裾切値以上含む混合物のいずれかに該当するものも、リスクアセスメントの義務の対象だよ!

いつ行う?

義務
  1. 新たにリスクアセスメント対象物を原材料等として採用あるいは変更することになったとき。
  2. リスクアセスメント対象物を取り扱う作業方法や手順が新たに採用あるいは変更になったとき。
  3. 化学物質等の危険性・有害性の情報に変化が生じたとき。
努力義務
  1. 化学物質等に関連した労働災害が発生した場合のうち、過去のリスクアセスメント等の内容に問題があることがわかったとき。
  2. 前回のリスクアセスメント等から一定の期間が経過し、機械設備等の経年劣化や労働者の入れ替わり、新たな安全衛生の知見が集積された場合。
  3. 当該化学物質等を製造し、又は取り扱う業務について過去にリスクアセスメント等を実施したことがない場合。
  4. 事業場内で取り扱うすべての物質について一度はリスクアセスメント実施の俎上に載せることを推奨。

従来から取り扱っている物質を従来どおりの方法で取り扱う場合は、リスクアセスメント実施義務の対象にはならないよ。ただし、過去にリスクアセスメントを行ったことがない場合には、事業場における化学物質のリスクを把握するためにも、計画的にリスクアセスメントを実施するようにしよう。

化学物質管理者は何を行う?

  1. リスクアセスメント優先順位の決定(取扱量が多い、危険性・有害性が高いものを優先するなど)
  2. 作業場あるいは作業者ごとのリスクアセスメントの方法の決定(どのように行う?を参照)
  3. 決定した方法にしたがったリスクアセスメントの実施
  4. リスクアセスメント結果の労働者への周知

どのように行う?

労働安全衛生法で求められる化学物質のリスクアセスメントにおけるリスクの見積りはその方法を事業者が自らの責任で選択、実行することができます。
リスクの見積もりは物理化学的な危険性と健康有害性の両方の項目で実施することとされており、危害の発生可能性と重大性の組み合わせで見積もる方法や数理モデルによる方法等が推奨されています。

危険性と健康有害性のそれぞれにおけるリスクアセスメントで求められていることを次に説明します。

化学物質の危険性に対するリスクアセスメント

化学物質の危険性においては、火災・爆発に至るシナリオの発生頻度(発生可能性)と火災・爆発の発生による重篤度(影響の大きさ)でリスクを見積もります。

CREATE-SIMPLE 危険性スクリーニング支援ツール 安衛研法

化学物質の危険性に対するリスクアセスメント」のサイトも参考になるよ!

化学物質の健康有害性に対するリスクアセスメント

化学物質の健康有害性に関するリスクアセスメントは、

  1. 1化学物質などによる有害性の種類と重篤度を特定する
  2. 2化学物質のばく露状況を把握する
  3. 3①②に基づき特定された有害性に基づくリスクを見積もる
  4. 4リスクの見積もり結果に基づいてリスク低減措置(リスクを減らす対策)の内容を検討する

ことが求められています。

リスクの見積もり

リスクの見積もりの方法は事業者に委ねられています。
健康有害性に関するリスクの見積もりについては次の図に示すような様々な方法があります。
一般的には数多くの物質についておおまかなリスクを見積もり、リスク低減措置を適用してもリスクの懸念があるケースについてより精緻な評価が行われます。

図 リスクを見積もるさまざまな方法とその特徴について

実際にリスクを見積もる方法の参考として、「職場のあんぜんサイト」にてリスクアセスメントの実施支援システムが公開されています。

濃度基準値等の情報の有無によるフロー

リスクの見積もりを行うための情報の有無に応じて、リスクアセスメント支援ツールの活用と並行して濃度基準値等の情報を活用することができます。
化学物質の濃度基準値とその適用方法などは告示で定められています。(厚生労働省のページへ

CREATE-SIMPLE CREATE-SIMPLE

その他の参照情報

関連業界が作成しているマニュアルに従って作業方法等を確認してリスクアセスメントを実施することもできます。

【参考】  職場の化学物質管理に関する業種別マニュアル等の紹介

各業種等で作成、公開をしているガイダンスやガイドライン等について紹介します。

また、特化則等に準じた措置等を確認してアセスメントを実施することもできます。

各リスクアセスメント手法およびその特徴

  手法 備考
濃度の測定を伴わないリスクアセスメント
数理モデル(CREATE-SIMPLE等)
  1. 数多くの物質を簡易に評価でき、リスクが十分低いことが確認できれば実測せずにリスクアセスメントを終了することができる。
  2. リスクアセスメント結果を電子化された共通様式で保存可能
  3. 付随して経皮吸収や皮膚、眼への有害性が認められる物質の皮膚接触や経皮吸収によるリスクの評価が出来る
コントロール・バンディング
  1. 有害性情報、取扱い物質の揮発性・飛散性、取扱量からリスクの見積もりが可能
マトリックス法、数値化法等
  1. 職場のあんせんサイトに掲載されているパターン化した作業に関しては簡単にリスクの見積もりが可能
業界等のマニュアルに従って作業方法を確認する方法
  1. マニュアルに沿って作業を行えば安全な作業となり得る
特別規則で規定されている具体的な措置に準じた方法
  1. 行うべき措置が決められている
  2. よく管理されている特別規則対象物質は現状でよい
濃度の測定を伴うリスクアセスメント
簡易測定(検知管)
  1. 特別な測定技術が不要
  2. 現場での校正が不要
  3. 現場で濃度がわかる
簡易測定(リアルタイムモニター)
  1. 特別な測定技術が不要
  2. 現場で濃度がわかる
  3. データロギング機能があり、ばく露状況の時間的推移を把握できる。
個人ばく露測定
  1. ばく露測定として最終的な方法であり結果の確実性が高い
作業環境測定法
  1. 個人サンプリング法による作業環境測定(C・D測定)は、個人ばく露測定とその結果の統計的な評価を兼ねることができる
  2. 工学的対策の設計と評価を実施する場合には、試料採取箇所は、良くデザインされた場の測定が活用できる

労働者のばく露濃度低減措置(ばく露濃度の最小化、濃度基準値の順守)

リスクアセスメントの結果にかかわらず、事業者は労働者がリスクアセスメント対象物にばく露される程度を次の方法等で最小限度にしなければなりません。

方法の詳細はSTEP 3-1:リスク低減措置の種類と検討の優先順位参照。

  1. 1本質的安全対策の実施
  1. 2衛生工学的対策の実施
  1. 3管理的対策の実施
  1. 4有効な個人用保護具の着用

また、濃度基準値が設定された物質は、屋内作業場で労働者がばく露される程度を濃度基準値以下としなければなりません。なお、リスクアセスメント対象物以外の物質も労働者がばく露される程度を最小限度にするように努めなければなりません。

皮膚等障害化学物質等への直接接触の防止(障害等防止用保護具の使用)

皮膚・眼刺激性、皮膚腐食性または皮膚から吸収され健康障害を引き起こしうる化学物質と当該物質を含有する製剤を製造し、または取り扱う業務に労働者を従事させる場合には、その物質の有害性に応じて、労働者に障害等防止用保護具を使用させなければなりません。

  1. 1健康障害を起こすおそれのあることが明らかな物質を製造し、または取り扱う業務に従事する労働者

保護眼鏡、不浸透性の保護衣、保護手袋または履物等の適切な保護具を使用する

  1. 2健康障害を起こすおそれがないことが明らかなもの以外の物質を製造し、または取り扱う業務に従事する労働者(①の労働者を除く)

保護眼鏡、保護衣、保護手袋または履物等の適切な保護具を使用する

皮膚等障害化学物質等に該当する化学物質に関しては厚生労働省から関係通達が発出されています。

なお、個人用保護具については厚生労働省から参考情報が公表されています。

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