第5巻では今回の労働安全衛生法関係法令の改正を推進するために設けられた「化学物質管理者」及び「保護具着用管理責任者」について説明します。今回の大幅な改正の目的は、①危険性や有害性に関する情報を働く人(労働者)に適切に伝え、働く人が自らリスクを削減するような行動ができるようにすること、②事業者は、数多くの危険性や有害性のある化学物質を適切に管理するために、優先順位を付けてリスクアセスメントを行い、その結果に基づいて対策を講ずるようになること、です。従来からの労働安全衛生法関係法令ではこれらの二つは十分に規定されていませんでした。そこでこれらを事業場内で適切に実行するために、「化学物質管理者」を業種や事業場規模にかかわらず選任することが義務付けられました。化学物質管理者の職務は情報伝達に関すること、リスクアセスメントに関すること、これらの記録や保存に関すること等です。化学物質管理者は小規模事業場が自律的な化学物質管理を進めるうえでの大きな柱になると期待されています。保護具着用管理責任者は、従来の役割に加え、今回の改正においては新たに、リスクアセスメントの結果、保護具の使用が必要になった場合に選任することになっており、その職務は多種多様な保護具の選択、使用、保守管理に関することです。第3章には個人用保護具の基礎もまとめました。保護具は有害物質から働く人を守る最後の砦です。保護具に関する知識はさまざまな災害時のみならず日常生活でも非常に役立つものなのでぜひ勉強してみてください。労働安全衛生総合研究所 2025年3月2シリーズ:働く人の化学物質管理ABCはじめに第5巻
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