52【特定標的臓器毒性(単回ばく露)】ヒトの急性中毒症状として中枢神経系抑制が見られ、血中でのギ酸の蓄積により代謝性アシドーシスに至る。そして視覚障害、失明、頭痛、めまい、嘔気、嘔吐、頻呼吸、昏睡などの症状があり、時に死に至ると記述されている(DFGOTvol.16,2001、EHC196,1997)。また、中枢神経系の障害、特に振せん麻痺様錐体外路系症状の記載(DFGOTvol.16,2001)もあり、さらに形態学的変化として脳白質の壊死も報告されている(DFGOTvol.16,2001)。これらのヒトの情報に基づき区分1(中枢神経系)とした。標的臓器としてさらに、眼に対する障害が特徴的であるので視覚器を、また、代謝性アシドーシスを裏付ける症状として頭痛、嘔気、嘔吐、頻呼吸、昏睡などの記載もあるので全身毒性をそれぞれ採用した。一方、マウスおよびラットの吸入ばく露による所見に「麻酔」が記載され(EHC196,1997、PATTY5th,2001)、ヒトの急性中毒に関する所見にも、中枢神経系の抑制から麻酔作用が生じていると記述されている(PATTY5th,2001)ので、区分3(麻酔作用)とした。【特定標的臓器毒性(反復ばく露)】ヒトの低濃度メタノールの長期ばく露の顕著な症状は、広範な眼に対する障害だったとする記述(EHC196,1997)や職業上のメタノールばく露による慢性毒性影響として、失明が見られたとの記述(ACGIH7th,2001)から区分1(視覚器)とした。また、メタノール蒸気に繰り返しばく露することによる慢性毒性症例に頭痛、めまい、不眠症、胃障害が現れたとの記述(ACGIH7th,2001)から、区分1(中枢神経系)とした。なお、ラットを用いた経口投与試験で肝臓重量変化や肝細胞肥大(PATTY5th,2001、IRIS,2005)などの報告があるが、適応性変化と思われ採用しなかった。【誤えん有害性】データなし。水生環境有害性【短期(急性)】魚類(ブルーギル)での96時間LC50=15,400mg/L(EHC196,1998)、甲殻類(ブラウンシュリンプ)での96時間LC50=1,340mg/L(EHC196,1998)であることから、区分に該当しないとした。【長期(慢性)】難水溶性でなく(水溶解度=1.00×106mg/L(PHYSPROPDatabase,2005))、急性毒性が低いことから、区分に該当しないとした。12環境影響情報(a)生態毒性(利用可能な場合、水生および陸生)(b)残留性と分解性(c)生物蓄積性(d)土壌中の移動度(e)他の有害影響
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