職場化学物質管理
化学物質への理解を高め自律的な管理を基本とする仕組みへ

新着・更新履歴

2023/2/10情報提供
「令和4年度化学物質管理に係る専門家検討会」の報告書が公表されました。
2023/1/6 情報提供
「化学物質管理専門家の要件に係る作業環境測定士に対する講習ついて」が通達されました。
2022/12/26情報提供
「労働安全衛生規則に基づき作業記録等の30年間保存が必要ながん原性物質を定める告示」が発出されました。
2022/12/26情報提供
「保護具着用管理責任者に対する教育の実施について」が通達されました。
2022/11/30情報提供
「第三管理区分に区分された場所に係る有機溶剤等の濃度の測定の方法等」が告示されました。
2022/10/18動画公開
法令改正紹介の動画をJNIOSH-channelにアップロードしました。労働安全衛生総合研究所HPから視聴できます。 社内での啓発等にご活用ください。
2022/10/18お知らせ
国連GHS文書 改訂9版の和訳(仮訳)を労働安全衛生総合研究所HPにアップロードしました。
2022/09/07行政通達
化学物質管理者の養成講習内容および化学物質管理専門家要件に関する告示、および施行通達が発出されました。
なお、告示本文は本サイトの「事業所の準備の例」および「サポートのご案内-外部専門家による支援」にリンクがあります。
2022/05/31お知らせ
化学物質管理の新たな法改正が公布され、関連する施行通達等が公表されました。
2022/04/15お知らせ
「労働安全衛生規則等の一部を改正する省令」が公布されました。
2022/02/20お知らせ
「プラントにおけるドローンの安全な運用方法に関するガイドライン」が改訂されました。

変更(改正)のポイント

なぜ変わるの?

国の審議会である「職場における化学物質等の管理のあり方に関する検討会」において、「化学物質の自律的な管理」を念頭に置いた新しい化学物質の管理体制を導入することの必要性が示され(令和3(2021)年7月)、その報告に基づき新たな政省令が公布されました(令和4(2022)年2月及び5月)。

国内の労災発生状況
近年の労働災害データでは、未規制化学物質による健康障害が8割を占めるようになり、また重篤な災害事例(石綿ばく露労働者の肺がん・悪性中皮腫、印刷工の胆管がん、染料製造労働者の膀胱がん等)も発生しています。

これらの災害事例などから、あらためて労働者への取扱い物質の危険性・有害性の周知及びリスクアセスメントに基づいた対策の重要性が浮き彫りになりました。
グローバル対応
化学物質は年々増加の一途をたどり、現在登録されている化学物質の数は2億種類に届くような勢いです。

また、産業現場で使用する化学物質の用途も多様化していますが、個別の物質を細かく法律で規制することには限度があります。

このような現状から、化学物質管理は事業者が自律的に管理することが、欧米をはじめアジア諸国でも国際的なスタンダードとなりつつあります。

どう変わるの?

労働者のばく露防止対策等を定めた化学物質規制体系が、化学物質ごとの個別具体的な法令による規制から、以下を原則とするリスクベースの仕組み(自律的な管理)に変わります。

化学物質の危険性・有害性に関する情報の伝達が強化されます。
ラベル表示及びSDS交付の義務対象物質が政府によるGHS分類に基づき順次拡充されます。
SDS等の通知方法に、ホームページのアドレスや二次元コード等を使用できるようになります。
職場で使う化学物質の危険性・有害性を「現場で」「すぐに」確認することができるようになります。
事業者はその情報に基づいてリスクアセスメントを行い、ばく露防止対策を自ら選択して実行します。
リスクアセスメント対象物※1は、その使用に際してリスクアセスメントの実施が必要になり、その記録と、結果に基づく対策をする必要があります。なお以下については、事業者が決めることができます。

リスクアセスメントの実施方法
労働者のばく露を(濃度基準値※2がある場合はそれ以下に)減らすための対策方法
  • ※1:政府がGHS に基づいて分類(政府分類)した化学物質のうち政省令で指定されている物質
  • ※2:当該業務に従事する労働者がこれらの物にばく露される濃度の上限として、厚生労働大臣が定める基準
「化学物質管理者」「保護具着用管理責任者」の選任が必要になります。
化学物質管理者※1
職場における化学物質管理に必要な種々の業務(ラベル・SDSの確認、リスクアセスメントの実施の管理、リスクアセスメント結果に基づくばく露防止措置の選択・実施の管理、関連する各種記録の作成・保存、労働者への周知・教育、労働災害発生時の対応など)を担当します。業種によっては専門的な講習が必要となります。

リスクアセスメント対象物の「製造業者」:専門的講習を修了したものを選任
上記以外の事業者:選任要件は無いが、講習を受講・修了した者が望ましい
  • ※1:選任義務は「リスクアセスメント対象物を製造し、又は取り扱う事業場(業種・規模要件なし)」
保護具着用管理責任者※2
リスクアセスメントの結果に基づく措置として、労働者に保護具を使用させる場合に、有効な保護具の選択、労働者の使用状況の管理その他保護具の管理に係る業務を担当します。

  • ※2:選任義務は「リスクアセスメント対象物を製造し、又は取り扱う事業場(業種・規模要件なし)」
(安全)衛生委員会の付議事項が追加されます。
自律的な管理が適切に実施されていることを、労使等でモニタリングするために、(安全)衛生委員会での調査審議が必要になります。

労働者が化学物質にばく露される程度を最小限度にするために講ずる措置に関すること。
濃度基準値設定物質について、労働者がばく露される程度を濃度基準値以下とするために講ずる措置に関すること。
リスクアセスメントの結果に基づき事業者が自ら選択して講ずるばく露防止措置の一環として実施した健康診断の結果及びその診断結果に基づき講ずる措置に関すること。
濃度基準値設定物質について、労働者が濃度基準値を超えてばく露した際に実施した健康診断の結果、講ずる措置に関すること。

変更(改正)後のメリット

特化則等に基づく措置が柔軟化されます。
化学物質管理の水準が一定以上であると所轄都道府県労働局長が認定した事業場については、当該認定に係る特別規則について個別規制の適用を除外し、事業者によるリスクアセスメントに基づく管理に委ねることができます。
有機溶剤、特定化学物質(特別管理物質等を除く。)、鉛、四アルキル鉛に関する特殊健康診断の実施頻度について、作業環境管理やばく露防止対策等が適切に実施されている場合など、事業者はそのリスクに応じて、当該健康診断の実施頻度(通常は6月以内ごとに1回)を1年以内ごとに1回に緩和できるようになります。
事業者の裁量の拡大に伴い、経営資源を適正に配分することができます。
事業者の裁量拡大と資源の適正配分
労働災害の芽を摘む「リスクアセスメント」は、その方法や結果対応は事業者にその裁量があります。すなわち、労働災害の発生防止だけでなく、従来の人的資源及び費用を、本当に必要な安全衛生対策へ適正配分することが事業者の判断で可能になります。
働く人の権利の拡大につながります。
労働者の権利の拡大
事業所の規模の大小にかかわらず「自律的な管理」が導入されることで、労働安全衛生対策が広く小規模事業場にまで及ぶことになり、その結果、労働者が安全かつ健康に働く権利が更に充実することにつながります。

スケジュール

  2022(R4).5.31(公布日) 2023(R5).4.1 2024(R6).4.1
化学物質管理体系の見直し
1-1ラベル表示・通知をしなければならない化学物質の追加    
1-2(1)(3)ばく露を最小限度にすること
(ばく露を濃度基準値以下にすること)
 
1-2(2)ばく露低減措置等の意見聴取、記録作成・保存    
1-3皮膚等障害化学物質への直接接触の防止
(健康障害を起こすおそれのある物質関係)
 
1-4衛生委員会付議事項の追加    
1-5がん等の遅発性疾病の把握強化    
1-6リスクアセスメント結果等に係る記録の作成保存    
1-7化学物質労災発生事業場等への労働基準監督署長による指示    
1-8(1)リスクアセスメントに基づく健康診断の実施・記録作成等    
1-8(2)がん原性物質の作業記録の保存    
実施体制の確立
2-1化学物質管理者の選任義務化    
2-2保護具着用管理責任者の選任義務化    
2-3雇入れ時等教育の拡充    
2-4職長等に対する安全衛生教育が必要となる業種の拡大    
情報伝達の強化
3-1SDS等による通知方法の柔軟化    
3-2SDS等の「人体に及ぼす作用」の定期確認及び更新    
3-3SDS等による通知事項の追加及び含有量表示の適正化    
3-4事業場内別容器保管時の措置の強化    
3-5注文者が必要な措置を講じなければならない設備の範囲の拡大    
4管理水準良好事業場の特別規則等適用除外    
5特殊健康診断の実施頻度の緩和    
6第三管理区分事業場の措置強化    

準備とサポート

事業所の準備の例

化学物質管理体制の整備
社内の周知・啓発
改正の主旨や具体的な実施事項について、社内の安全衛生管理の担当者間での情報共有を進めましょう。
また、経営サイドや現場で働く労働者への周知・啓発をすることで、事業場全体の共通理解を促しましょう。

有資格者の選任
化学物質管理者と保護具着用管理責任者の選任要件を確認し、必要な場合はその選任を進めましょう。

ツールや情報源の確保
ツール
リスクアセスメントや、それに基づくばく露防止対策、健康モニタリングの方法は事業者が選択することができます。
それぞれの職場の状況に応じた評価や対策ができるように、後述する情報源なども利用して、事前に確認や検討をしましょう。
また、自律的な管理導入に向けたガイドラインも今後整備する予定です。

情報源
リスクアセスメントにはSDSや職場での化学物質取り扱い状況など、事前に情報を集める必要があります。
また、その結果に基づく対策手段はこれまでにいろいろな方法やヒントが蓄積されています。
こうした情報の情報源をあらかじめ探して、確保おきましょう。また、情報は定期的に更新しましょう。

サポートのご案内

外部専門家による支援
化学物質の自律的な管理を実施するための体制整備として、事業場内での有資格者(化学物質管理者、保護具着用管理責任者等)の確保や職長・労働者等に対する教育を図るとともに、災害発生時や第三管理区分などへの対応のみならず、事業者からの依頼に応じて化学物質管理に関する様々な相談、助言、指導等を行うことができる外部専門家を確保することが望まれます。

化学物質管理支援ポータルサイトの開設(令和5年末オープン予定)
ポータルサイト開設までの間は、労働安全衛生総合研究所のサイトにて情報の提供・更新をする予定です。

リンク集

お問い合わせ

労働安全衛生総合研究所化学物質情報管理研究センター
問合せ窓口 : 
cimr-toiawase@h.jniosh.johas.go.jp

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